ローコード・ノーコード

生成AIや新しい技術を教える・学ぶ上での心構えとは-DJ Tokinaga 4

リプリパ編集部

プログラミングと言えば、ローコード・ノーコードだけでなく、毎週のように驚異的な進化を続けているAIが気になります。ChatGPTやGoogle Gemini、Microsoft Copilot、Claude、GitHub、Xcodeなど、開発プラットフォームやツールも、どんどんAI対応が拡がっています。

IT企業の社内トレーニング担当として、BlueMemeの技術トレーナーDJ Tokinagaはどうキャッチアップしているのか?最後に聞いてみます。

生成AIとプログラミングという、新しいテーマ

―生成AIで高度なプログラムが書けたり、副操縦士(コパイロット)としてペアプログラミングする便利さに、現場のエンジニアから驚異の声が上がっています。『これ無しの頃に戻れない!』『低レベルのエンジニア、終わった…』とか。生成AIは、ローコード・ノーコード開発プラットフォームと組み合わせて使われることも、さらに増えるでしょう。ただ、『ChatGPTやOutSystemsがないと、何もできません!』は、ちょっとマズいだろって気がしてますが、どうですか?

DJ Tokinaga:先日、OutSystemsと生成AIを連携させるAI Agent Builderが発表されました。確かに、生成AIやローコード・ノーコードツールで、いろんなものが作れるようにはなると思います。でも、「本物のサービスやツール」が作れるのはやっぱり「本物の人」が作ったものになっていく気がします。例えば、以前のDJの話でも言いましたけど、音楽も作りたい人が自由に作って配信までできる環境が整っています。でも、その中で質の良い音楽や、人に響く音楽って、凄く限られてると思うんですよ。

▼OutSystems、AI Agent Builderを発表 | OutSystems
https://www.outsystems.com/news/introducing-ai-agent-builder/

―玉石混交の石ばかりが増えまくってると、ますます玉が貴重になっていく、と。

DJ Tokinaga:そうですね。だから、不特定多数の人たちが生成AIでコーディングして、何かアプリケーションを片っ端からリリースすることはできるでしょう。ですけど、本当に価値のあるアプリケーションは、やっぱりちゃんと本質を知ってる人じゃないと作れない気はします。

―確かに、そうですね。大半のビジネスユーザーは、Microsoft 365 Copilotで満足なはずなんですよ。もうWordでそれなりの文書も作ってくれるし、PowerPointのプレゼン資料もできる。いちいちマクロ書かなくてもExcelが使えて、軽くRPA(プログラムとしてのロボットによる自動化)で楽できるんなら、それで十分って人が多い気がします。

DJ Tokinaga:はい、そういう目的はある程度カバーできると思います。でも、それだけじゃ達成できないニーズがあるはずです。

トレーナーとして、最新技術をアップデートするのは…

―OutSystemsや周辺サービスも常にアップデート・アップグレードされるわけでしょう?生成AIみたいに、プログラミングスタイルがドラスティックに変化する中で、指導側としてのアップデートやキャッチアップって、大変ですよね?

DJ Tokinaga:OutSystemsの機能アップデートのような情報は、社内のエンジニアチームから必要に応じてアナウンスされます。ただ、自分がいろんなことを全部理解して、すべてを教えられる状態でなくてもいいのかなぁと。誰かが『何かをやりたい』っていう時に、『じゃあ、一緒に調べて考えてみよう』って解決に導くことができれば、必ずしも全てのことを知っていなくても良いのかなとも思ってます。ちょっと、自分の甘えにつながる部分であるんですけど…。

―自分で何かができることと、それを人に教えられることって別のスキルですけど、一緒に取り組めるのはまた違うスキルかもしれませんね。実際、高速なスピードで環境が変化してる今の世の中で、いろんなことを深く理解して他者に教えられるようになるって、もう人間だけでは無理っぽくなってますもん。
ところで、他社のトレーニング事例やツールで、何か参考にしてることはありますか?

DJ Tokinaga:自分が通ってたわけじゃないですけど、KUMONみたいな感じでトレーニングができるのが理想かなと思っています。誰か指導役が付きっきりで皆に教えるわけではなくて、自分たちそれぞれのペースである程度学習して、必要な時にいろいろ教え合えるような。

すべてをトレーナーが付いて教えなければならず、しかもリモートがメインだったコロナ禍の2~3年前は、実際に凄く大変だったんですが、自習+必要な時に一緒にやる形だと、トレーニング自体は一人でやっても何とか回せるものです。

―実際に仕事で出てきたら、『あ!KUMONでやったヤツだ!』みたいな(笑)。受講生の中で優秀な人は、TA(ティーチングアシスタント)的に半分引き込むのもいいかもしれませんよ、共犯者として(笑)。

DJ Tokinaga:それもありだと思います。アウトプットする人自身も、知識が定着できますし。自分のスキルを伸ばすために、さらに学習してもらった方が会社全体のためになると思います。

DXで必要なのは、ビジネスプロセスからの見直し

―一般のビジネスツールも、AIでさらに強化されてRPA以上のことができるようになる。その一方で、ITエンジニアに頼まなくても、一般の人が自分の手元で必要なアプリなりサービスを開発できる、シチズンデベロッパー(市民開発者)が必要とされるようになる。
この辺りの棲み分けって、どうなってくと思いますか?個人的には、『人類は、AI時代になっても永遠にOfficeの呪縛から離れられないの!?』って、軽い絶望もありますけど(涙)。

DJ Tokinaga:確かに、大半のビジネス業務って、やろうと思えばOfficeとその周辺でできてしまう気もするんですよね。

前に自分が参画したプロジェクトの依頼主は、実際にExcelを凄く駆使して、頑張ってやってたんです。けど、あまりにも扱うデータ量が多くなって、Excel自体がめちゃくちゃ重くなって。いろいろ作業して保存ボタンを押したけど、保存中となってグルグル回るアイコンが延々表示されて最終的にExcelがおちてしまって、それまで作業したものが全部パーになったり。

だから、最初はExcelとかでどうにかなっていても、ビジネスが拡大していけば、徐々にちゃんとした専用アプリケーションを作っていく必要があると思います。ただ、アプリケーションを作るにあたっては、そのアプリケーション部分だけ見てても業務改善ってできないんです。

―どういうことですか?

DJ Tokinaga:アプリケーションを使う人たちが普段の業務でどんなことをやってるか、そのプロセスをしっかり解析して、理解する必要があるんです。どんな機能があれば、こういうプロセスを短縮したり省略できるとか、そういう部分って、単に会社の中にいる人たちだけではできないんですよ。

―今の業務を深く知ってしまっているからこそ、ダークパターンに最適化されてしまうことで、変えられない(と思い込んでいる)こともあるでしょうからね。

DJ Tokinaga:そうなんです。だから、単に個別のアプリケーションだけではなく、それを作る・使う以前のいろんなプロセスを整理して、設計・開発・運用していく、ビジネス全体のコンサルティングや、ビジネスアーキテクトが重要です。

―トレーニングも、そのための入口の一つだということですね。DXに直結するのが、アプリケーションやパッケージ、サービスの都合に人の仕事を合わせるんじゃなくて、『そもそも、本当にこのやり方でいいんだっけ?』『目的を達成するために、この作業って必要?』ってところから見直してみること。そうすると結局は、自分たちにベストな道具を自分たちで開発するのが一番妥当じゃないのか?っていうところに行き着く、と。

DJ Tokinaga:そうなんです。DXでこれもよく言われるのが、業務改善するにあたって、どんなアプリを使うかを最初に決めてしまうと、アプリ側の都合に合わせなければいけなくなるんです。なので、先にその業務を分析して、自分たちに合ったアプリケーションを選定し、必要なら内製化して開発するのが、効果的だと思います。

トレーニング内容のアップデートと、自己学習の仕組み化

―2024年4月からのトレーニングも、また何か新しいアップデートを予定してますか?

DJ Tokinaga:今月すでに、開発未経験の人が中途入社で入ってきたので、まずは、その人が開発できるようにしていくのが目標です。その中で、トレーニングとしてのいろんな改善点を試してみるつもりです。それを踏まえて、4月の新卒メンバーに提供したいと思っています。

現場からのフィードバックの話もしましたが、新人社員の皆さんと同じ現場で仕事をしている先輩メンバーたちにヒアリングして、足りないところを補うようなトレーニングを、追加で実施できればなと考えています。

―新人さんに限らず、人って本人に『大丈夫?』って聞いても、『大丈夫です!』ってつい言っちゃいますからね。トレーニングの内容や運営もアジャイルに、と。
最後に、育成という点では、DJ Tokinagaの代わりの教える側の人材って、どうやって育ててますか?自分でトレーナーやりたいです!っていう人もいれば、周りの評価で打診があったり、異動で回ってきたりするんでしょうか?

DJ Tokinaga:実は、次世代のトレーナー育成って、現在はできてないんです。でも、理想は教える人がいなくても、自分で育つような学習コンテンツと提供の仕組みです。僕が十数人の新卒メンバーに向けて同じことを説明しなくても、自分で学習できるような仕組みを展開して、発展させていけるのが一番です。

―大体、一番学習できるのって、教える側の立場の人ですからね。ありがとうございました。


一番のユーザーである、自分自身のニーズと対話する。伸び伸びと学べる環境を用意しておけば、自然に学んで成長できる。そんなモデルの体現者は、ご自身であり、息子さんなのかもしれません。

さて、皆さんの組織やチームでは、社内外のトレーニングで成功したこと、逆に、上手くいかなかったこと、何か工夫したことはありますか?コメントやソーシャルメディアでぜひ教えてください。ご意見・ご感想もお気軽にお寄せください。教え合うのが効果的らしいですから!

一般の皆さんにご参加いただけるOutSystems公式トレーニングや認定資格試験は、定期的に実施しています。ぜひお気軽にご参加ください。

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