次世代を担う期待の人材!高専出身者が語る高等専門学校の可能性
今回は、私の出身である高専(高等専門学校)について紹介します。
私は、小学生の頃から理科が大好きでした。中学生になり将来を意識するようになった時、自分の好きな理科をとことん学んで、世の中ですぐに活用できる能力を養いたいと考えて、高専の機械科に入学しました。高専卒業後は大学に編入し大学院を修了しました。このキャリアの中で高専は、科学が世の中でどのように活用されているか、理論と実装を交互に学ぶことで技術に対する理解と解像度を底上げできた、素晴らしい環境でした。
熊本のTSMC、北海道千歳市のRapidusなど、国内でも半導体の需要が高まっています。同時に、高専の人材にも注目が集まっているので、出身者として語ってみます。
そもそも高専(高等専門学校)とは?
高専とは、実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。全国に国公私立合わせて58校あり、全体で約6万人の学生が学んでいます。高専の歴史は他の学校と比べて浅く、1961年に高専法が成立し、1962年に改正後の学校教育法の下で最初の「高専」が設置されました。初年度の国立高専としては函館、旭川、福島、群馬、長岡、沼津、鈴鹿、明石、宇部、高松、新居浜、佐世保の12校が開校しました。
高専は5年制の学校で、「くさび形教育」というユニークな教育スタイルをとっています。これは、1年生から段階的に専門科目を導入していく教育方法で、学年が進むにつれて次第に専門科目の数が増えていきます。3年生では半々、4〜5年生ではほとんどが専門科目になります。5年間を通じて、一般科目と専門科目をバランスよく学ぶことで、卒業時には4年制大学卒業時と同等レベルの専門知識を得ることができます。
出身者が感じた、高専生の3つの特徴
次に、私が思う高専生の3つの特徴を挙げます。
1つ目は、「何か」に熱中していることです。私は機械科出身だったのですが、車や飛行機、電車などメカニカルなものが好きな人多かった印象です。またアニメや漫画などサブカル好きも多かったです。今思うと、オタクがめちゃくちゃ多かったです。
2つ目は、効率(要領)がいいことです。特にそれを感じたのは、テスト期間でした。入学した当初私は、授業用のノートとは別にまとめノート(復習用のノート)を用意して勉強していました。それを見たクラスメイトから『そんな効率の悪いことはやるな!』と一喝されました。彼は、ほとんどノートをとらず教科書に書き込んでいました。彼曰く、『教科書に全てが書いてあるので、そこに追記すれば情報を集約できるから効率がいい』とのことでした。この一言で私は考えを改めて、まとめノートを止め、授業用のノートと教科書に情報を集約させるようになりました。
3つ目は、向上心が高いことです。高専は現場の即戦力となる技術者の養成学校ですが、大学や専攻科(本科5年に加え2年間学び学士を取得できる課程)に進学する人が学年全体の4~5割ほどいます。また進学した人の中には、東工大や旧帝大など難関大へ進学した人もいて優秀な人が多かったです。進学に加えて留学した人もいて、留学から帰ってきたら英語力が大きく向上していました。このように大学への編入や留学を選ぶ人が多くいたことから、高専生は向上心が高いと感じています。
出身者が伝えたい、高専の3つの魅力
私が考える高専の魅力は、大きく3つあります。
1つ目は、実践的な教育です。高専は、理論だけでなく実験・実習を重視した教育を提供しています。これにより、学生は実際の業務に即したスキルを身につけることができます。私が在籍していた機械科では、モノづくりに関する理論と実習に取り組んでいました。金属を削るための切削理論や、材料の耐久値の計算を学ぶ材料力学など理論を学びました。さらに、その知識を応用し歯車減速機の設計、実習工場にあるフライス盤や旋盤を用いて加工・組み立てまで経験しました。このような実践的な経験は、単に知識を学ぶだけでは得られない、深い理解と技術の習得を可能にします。
2つ目は、早期からの専門性です。高専は15歳からの入学が可能で、初めから特定の分野(機械、電気・電子、情報、化学、建築・土木など)に特化した教育を受けられます。これにより、学生は早い段階から専門的な知識と技術を身につけることができ、高校と大学の間の学びを統合した5年間の一貫教育を受けられます。この教育システムにより、自分の興味のあることに没頭できます。
3つ目は、キャリアの幅が広い(選択肢が多い)ことです。以下が高専卒業後の進路で、主なパターンとしては5つです。
- 高専卒業→就職
- 高専卒業→専攻科→就職
- 高専卒業→専攻科→大学院(修士課程)→就職
- 高専卒業→大学に3年次編入学→就職
- 高専卒業→大学に3年次編入学→大学院(修士課程)→就職
高専5年間でやりたい仕事が見つかれば就職できますし、専攻科や大学への編入など自分の興味のある分野をさらに深めることもできます。就職に関しては、有効求人倍率は高専にもよりますが約40倍ととても高く、また多くの高専は企業や産業界との強い連携があるため、日本のトップメーカーへの就職実績も多数あります。
専攻科への進学は、本科での卒業研究を発展させさらに研究を深めることができ、就職活動でも高専というブランドで「無双」できます。大学への編入に関しては、数学と専門教科、英語(TOEICなど)と内申点で受験することができ、共通テストを受けずに自分の得意分野で闘えるのも魅力です(私は、中学時代に国語の点数が壊滅的に悪かったので、高専→編入のシステムを利用するために高専に入学しました)。また、豊橋技術科学大学や長岡技術科学大学など、高専生を多く受け入れる大学もあり、自分の興味のある分野を深めるのにうってつけの環境です。
時代は高専生を求めている!
以下の記事にもある通り、時代は高専生を求めていると思います。
高専生は15歳から多様なテクノロジーを当たり前のように学び、そして使いこなせるようになって卒業していきます。それが産業界で「即戦力」と呼ばれる所以でしょう。昨今、さまざまな分野でDX化が進んでいますが、人材不足が課題となっています。私はこの人材として、新しいテクノロジーを学ぶのに長けている高専生は適任だと考えます。高専は製造業への就職は強いですが、IT業界への就職はまだまだな状態です。高専と企業が連携し、高専からIT業界への就職率が増えることを願っています。