ローコード・ノーコード

業務もITも理解したビジネスアーキテクトなんて育成できるのか?

リプリパ編集部

前回の記事では、最近「ビジネスアーキテクト」という新しい職種が注目されていることを紹介しました。アーキテクト(建築家)と言っても、企業のゴールを達成するために、ビジネスとITの両面から課題を捉え、解決策を策定する「ビジネス x ITの建築家」です。近年、DXの推進に不可欠なビジネスアーキテクトの役割はますます重要になっています。

しかし、ビジネス現場のことも深く理解し、業界やITテクノロジーも把握して、社会の変化にも敏感で、対人交渉もスムーズに進められる…そんな非の打ち所ない人材なんて、本当に育成できるんでしょうか?どうやって?

ビジネスアーキテクトになれるのは、スーパー人材だけ?

いきなり出落ち気味ですが、すべてにおいて十分な経験を持つビジネスアーキテクトなど、この世に存在しません。そもそも、何をどこまで経験すればOKという、ハッキリした基準がないのは当たり前。仕事である以上、「十分な経験」が得られることなど永遠にないわけですから。

確かに、ビジネスアーキテクトにはさまざまな横断的スキルが求められます。自社や取引先のビジネスを深く理解するだけでなく、ITやマーケティング、コミュニケーションなど、職業人としての総合力が試されます。広くて深い経験があることは有利ですが、経験や育成には長い時間が掛かります。そのことを心配したり躊躇する時間があったら、ビジョンを持つ資質やスキルや常に学び続ける姿勢、各ステークホルダーとの意思疎通の方が重要です。

ビジネスアーキテクトは、どうやって人材育成や確保する?

とはいえ、優秀な人材の確保は、企業にとって将来を左右する至上命題の一つ。そうでなくても、IT人材不足は社会問題化しています。そこで有効な対策が2つあります。

一つは、外部のリソースを活用するアウトソーシングです。外部企業にシステム開発をアウトソースしている状況でも、SIer(システムインテグレーター)と連携して、ビジネスとITの両面から課題を捉え、解決策を策定することができれば、ビジネスアーキテクトとして活躍することは可能です。現在、アウトソース先と良好なパートナーシップが構築できている場合に有効な手段ですが、役割やアプローチが若干異なります。

  • ビジネスとITの調整:アウトソース先が提供する技術的な解決策が、自社のビジネス要件や戦略に合致しているかを確認・調整
  • コミュニケーションのブリッジ:外部パートナーと、技術的な要件を適切に翻訳・伝達し、意思疎通を円滑に
  • 契約・SLAの管理:サービスレベル契約(SLA)や契約内容を理解し、外部パートナーとの関係を最適化

ビジネスアーキテクトにこそ必須なのが、ローコードツールだ!

ビジネスアーキテクトとしての人材育成のもう一つの対策は、ローコード・ノーコード開発プラットフォームの導入です。ナレッジの共有や継承、コストと時間など、人材育成の難しさがあるとしても、長期的に見れば、ソフトウェア開発と人材の両方を組織の内部に確保しておくことは、企業にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。

少ないコーディングでアプリケーションを迅速に開発できるローコード開発プラットフォームと、組織のビジネスモデルやプロセス、技術を最適化するビジネスアーキテクトは密接な関係があります。というより、変化が激しい現代のビジネス環境においては、そもそもローコードツールの特長を最大限に活かすことが、ビジネスアーキテクトとして活躍する必須条件の一つになっています。メリットやリスクを理解した上で、自社に最適な活用方法を検討することが重要です。

ビジネスアーキテクトがローコードツールを使うメリット

ローコードツールにはさまざまなメリットがあります。自社または取引先のビジネスを深く知り、ITシステムとしてソリューションを提供するビジネスアーキテクトには必須のサービスです。

ビジネスとITのギャップを縮小

ビジネスサイドの人々が直接アプリケーション開発に関与することで、コミュニケーションや認識のギャップが縮小されます。ビジネスチャンスやマーケット、テクノロジーから見た自社のSWOT(強み/弱み/機会/脅威)を肌感覚で理解していれば、迅速な意志決定が可能です。

幅広い人材の活用

ローコード開発プラットフォームは、IT人材の確保という課題を解決できます。コードを書くのではなく、モジュールを組み合わせていくビジュアルプログラミングにより、開発経験がないビジネス部門の社員が、必要なアプリケーションを自分で作れます。また、エンジニアも、基本的なコーディングから解放され、より高度な機能やビジネスロジックに集中できます。

開発コストや期間の削減

伝統的な開発手法に比べて、ローコード開発プラットフォームは、必要最小限のコーディングに抑えられるため、開発コストや期間を削減できます。新しいビジネスアイデアやプロセスのプロトタイプを迅速に作成し、すぐにテストできます。内製化によって、長期的なコスト削減や最適化が可能です。

効率性や柔軟性の向上

ソフトウェア開発を内製化することで、ビジネスの要件が変わっても、システムを柔軟に変更・拡張できます。新しい技術への対応やプラットフォーム連携も簡単です。また、ナレッジを社内に蓄積し共有することで、人材教育の点でもプラスに作用します。

ビジネスアーキテクトもローコードツールも、導入は総合的な判断がカギ

ローコード開発プラットフォームを活用するには、組織の戦略や目的に応じて、コストやスピード、技術的な柔軟性、ナレッジの蓄積などの要因を総合的に評価することが前提です。システムの規模や複雑さ、技術的な制約、携わる人材のスキルや経験、人材育成コスト、システムの保守性やセキュリティーなどに注意して検討することが必要です。情報システム部門とも連携した上で、ビジネスアーキテクトとしても必要な確認は怠らないようにしましょう。

  • スケーラビリティーとの関係:ローコード開発プラットフォームといっても、さまざまな種類があります。比較的小規模なシステムから、エンタープライズ向けの大規模なアプリケーションまで、目的や機能、規模によって選ぶことが重要です。
  • セキュリティーの管理:セキュリティーのベストプラクティスが適切に実装されていることが前提なのは、RPA(ソフトウェアロボットによる自動化)と同様です。
  • 導入や教育コストの最適化:システム開発や運用、人材教育のコストを最適化するためのローコードツールでもあります。必要なところに必要なリソースを割り当てることが重要です。
  • ベンダーロックと過度な依存:すべてのSaaSに言えることですが、特定のプラットフォームに強く依存することで、将来的にそこからの移行が困難になるリスクはゼロではありません。


近年、需要が高まっている職種の例として、データサイエンティストや無人自動運転車エンジニア、ドローンパイロットなどの仕事があります。これらの職種は、10年前には存在しませんでした。生成AIエンジニアに至っては、急速に注目され始めたのはここ数年の出来事です。

ビジネスアーキテクトという職種も、これと同じ状況です。ビジネスとITを一体的に捉えて変革するDXの推進に伴い、その役割や名前も徐々に知られるようになっていくかもしれません。この記事を最後まで読んでいただいた読者の皆さんも、数年後に振り返った時に、『実はあの頃、ビジネスアーキテクトとしてのキャリアを着実に積み重ねていた』ということもあるかも知れません。

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